最初のiHamsterが発表されて1年を過ぎようとしていた。iHamsterは飽きられつつあるともささやかれ始めている。にもかかわらず、現在でも高い人気を維持し、莫大な利益をもたらしているハムスターである事に変わりは無い。
今年の夏、あるハムスターの祭典で、かねてからの噂のiHamsterに続く新しい品種の発表が行われた。
その名は“iDwarf”。もっと小型のiRoborosvskiiの期待は裏切られたが、それでも熱狂的に歓迎された。
このiDwarfの毛色は、もちろんiHamsterを踏襲した透き通った被毛である。まず、iHamsterで人気の高かった2色が発表された。
主な特徴は、iHamsterよりも小型であることと、前屈すると閉じた二枚貝のようになる姿が愛らしいことである。また噂ではあるが、飼い主とテレパシーか何かでコミュニケーションがとれるらしい。しかし、所詮ハムスターなので飼い主はエサと散歩の執拗な要求に煩わされそうだ。
本国ではすでに14万頭ものバックオーダーを抱えているという。
我が国ではようやく予約が開始された。
また、最近行われたの別の会議において、“Power Hamster Golden 4 (G4)”が発表された。黄金(こがね)の名とは裏腹に深い黒鉄(くろがね)の輝きの被毛が印象的である。なんでも、光が1フィート(約30cm)進む間に回し車を1回転出来るくらい高速らしい。あまりの速さゆえこのハムは「兵器」の扱いを受けるという。そのため、いくつかの国家への輸出が規制されるのは残念である。
対する陣営はコードネーム「まわせど」(*)なるハムスターで巻き返しを図るという。
姿の愛らしさを競うのみでなく、回し車を高速に回転させる競争も活発化している。
このように、名門ブリーダーは復活を果たしたようだ。家庭用ハムスターに関しては強力なブランドイメージを確立し好調のように見える。これからは、かつては強いとされていた教育分野でのシェアの取り戻しが急務である。
さらに、従来から不得手としている産業分野への進出も課題である。この分野でのシェア確保は今後の発展に不可欠とされている。しかし、家庭用ハムスターのイメージが強いため、愛玩目的の飼育者からの反発も予想される。
ともかく、このブリーダーは、これからも我々愛好家を驚かせ、楽しませてくれるようなハムスターを作り続けるだろう。いや、それだけだろうか。ハムスターを愛する人を幸せにするだけでなく、きっとハムスター自らも幸せであるに違いない。そんな関係を願っているのだ。
(おわり)
(*)その後、正式名称が「イタチウム」に決定した。どうやらこれはフェレット系だったようだ。