ハムスターの飼育には、それなりの設備が必要である。飼育ケースや給水器、回し車などが販売されている。それらは、相も変わらず「ビジネスライク」なものばかりだった。そんな野暮なデザインはiHamsterに釣り合わず、不満に感じる飼い主はとても多かった。そんなときに、iHamsterに合わせてデザインされた用品が現れてヒット商品となった。iHamsterの飼い主のみならず、それ以外のハムスター飼育者にも受け入れられたのだ。
iHamsterの影響は、ハムスター用品のみに留まらなかった。その魅力的な毛色をモチーフにして、家電製品はもとより家具、文具に日用品、果てはクルマのバンパーに至るまでまでがiHamster化し始めたのだった。
当初iHamsterの毛色はブルーのみしか存在しないとされていた。他の毛色は噂はされていたがブリーダーは否定していた。そんなとき突然5色の新しい毛色が発表された。それぞれにフルーツの名前を冠したiHamster達は大歓迎され、iHamsterの世界は更に広がった。
一方、iHamsterの成功を目の当たりにして、既存のハムスターに漂白、着色するなど、上辺だけを真似たハムスターが現れた。この様な悪質な手法に対して一部から批判の声が上がったりした。それはともかく、これがまた売れるのだ。
もちろん、この様な意識の低いブリーダーは訴えられるはめになり、当然のように勝ち目は薄い。しかし、損害賠償は大した額ではないし、出荷停止命令の駆け込み需要すら見込んでいるあたりはしたたかである。(*)
いまやiHamsterは社会現象になってしまったのだ。
(つづく)
(*)その後、販売禁止の仮処分が下された。そして、結局は名門ブリーダーに解決金を支払う事で和解した。理由は、ただでさえハムスターは世代交代の早いので、法廷で争うよりも早期に和解した方が得策と判断したからだという。しかし、このような訴訟覚悟と思われるような商売を行うにあたり、法的な準備を全く怠っていたと言う事実は、このブリーダーの意識の低さを印象づける結果となった。そのうえ、名門ブリーダーのメンツを立ててやったような言い方をした事で、サイテーな印象を更に深く刻み付ける結果となった。
追記:そうそう、iHamsterは見かけによらず意外と重いのです。と、いうか、軽いと錯覚してしまうのですね。でもこれが適正体重なのです。決して太り過ぎではありませんので、飼い主の方はご心配なさらないでください。