発表会の稽古
「高砂 八段」、「養老 水波之伝」、「融 舞返」 2000年11月6日
今年(2000年)は私が師事している藤田朝太郎先生の弟子たちの笛の発表会がある年でした。この発表会は2年に一度開催されます。藤田先生の弟子が、北海道から、青森から、秋田から、新潟から集まり、関東在住の弟子とともに国立能楽堂で舞台に座ります。
お相手してくださるのは、囃子方はもちろんシテ方も職分(プロ)の先生方で、私たち素人にとっては晴れの舞台です。
ここ数回(といっても足掛け10年分くらいですが)、この会で私の吹いた曲は、いずれも観世流舞囃子で、「羽衣 彩色之伝」、「高砂 八段」、「猩々乱」、「養老 水波之伝」、「融 舞返」でした。「猩々乱」を除いていずれも小書付きです。”小書”というのは、能の特殊演出のことで普段の能の演出から、シテの型や舞(狭義の舞です)が変わります。私も笛の稽古が長くなったので発表会にはこのよう小書物を手がけるようになったわけです。
ここにあげた「高砂 八段」、「養老 水波之伝」は、常の神舞に代えて特殊な神舞が演奏されます。「融 舞返」は常の五段の舞に引き続き三段の舞が急の位で舞われます。いづれも緩急が激しい舞であり、特に急の位については、先生をしてやってみないとわからないというくらいその場の演奏者の気分で変わるものです。
素人の会とは言っても、舞うのは職分、特に小書付の舞は職分もそうめったに舞うことはないようなので真剣そのもの。笛の稽古にも力が入ります。ここでは、このような小書の舞の笛の稽古の様子と、稽古のなかで体得したこと、本番の舞台での感想などをまとめてみようと思います。
”小書”といっても、稽古で特別なことをするわけではありません。”唱歌(しょうが)”を覚え、先生の前で吹くということを繰り返すだけです。
笛の唱歌のうち普段吹くものは”唱歌集”に載っています。小書もののような特殊な舞は、先生から直接唱歌を習います。これは書いてあるものを見せてもらって書き写す場合と、先生が口で唱えるのを書き取る場合があります。常の舞から大幅に変わる場合が前者で、唱歌の一部のみ変更の場合が後者です。先にあげた三つの曲では、「高砂 八段」が書き写し、「水波之伝」が口述を書き取り、「舞返」は唱歌の変更はないので特にありませんでした。とはいっても、「高砂 八段」では、”カカリ常の通り”というような表記で当たり前のところは省略してあります。
唱歌でだいたいの曲の流れをつかんだら、後は先生の前で実際に吹いての稽古です。先生に太鼓あるいは大小をつけてもらって、曲の勘どころを体得できるまで稽古あるのみです。
それでは、個別の曲について。
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